公務員のための法律講座

問題演習を通して、法律知識のレベルアップを図ります

選択問題

〔第1問〕(配点:3) 私人間における人権保障に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には 1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№1]から[№3]) ア.「憲法の人権規定は私人間においても直接適用される」とする説のうち,私的自治の原則に より,人権の効力は私人相互間の場合にはその本質的な核心が侵されない限度で相対化される ことを認める見解は,こうした相対化を認める限度において,直接適用説といっても間接適用 説に類似したものになる。[№1] イ.「憲法の人権規定は,公権力の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的 に出たもので,私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない」とする説を前提 にすると,私人間における権利・自由の対立については,その侵害の態様,程度が社会的に許 容し得る一定の限界を超える場合に,私法規定の解釈を通じてその間の適切な調整を図ること ができるとの見解は採り得ない。[№2] ウ.「私人間の関係においても,相互の社会的力関係の相違から,一方が他方に優越し,事実上 後者が前者の意思に服従せざるを得ない場合,憲法の人権規定は私人間に直接適用される」と する説について,判例は,こうした支配関係はその支配力の態様,程度,規模等において様々 であり,どのような場合にこれを国又は公共団体の支配と同視すべきかの判定が困難であると している。[№3]
〔第2問〕(配点:3) 法の下の平等に関する次のアからウまでの各記述のうち,aは最高裁判所判例を要約したもの であり,bはその批判として書かれたものである。bがaの批判となっている場合には1を,そう でない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№4]から[№6]) ア.a.尊属の殺害について,尊属に対する尊重報恩は,社会生活上の基本的道義であり,この ような自然的情愛ないし普遍的倫理の維持は,刑法上の保護に値するから,これを刑の加 重要件とする規定を設けても,直ちに合理的な根拠を欠くものとは認められない。 b.尊属がただ尊属なるがゆえに特別の保護を受けるべきであるとの考えは,個人の尊厳と 人格価値の平等を基本とする民主主義の理念と抵触する。[№4] イ.a.女性に対し6か月の再婚禁止期間を定める規定について,厳密に父性の推定が重複する ことを回避するための期間を超えて婚姻を禁止することは正当化できないから,再婚禁止 期間のうち100日を超える部分は合理性を欠いた過剰な制約である。 b.子が出生した時点で法律上の父が定まらず,検査の実施や訴訟等により法律上の父を定 める場合,決定がかなり遅れる事態も想定され,それは子の利益に反する。[№5] ウ.a.出生後に認知を受けた子について,準正のあった場合に限り日本国籍を取得させると定 める規定は,準正のない子に対し,日本国民である父から胎児認知された又は母が日本国 民である非嫡出子と比較して,著しく不利益な差別的取扱いを生じさせている。 b.日本国民が母である非嫡出子は出生時において母の親権に服し,また,胎児認知は任意 認知に限られるため,出生の時点で既に血統を超えた我が国社会との結び付きがある。 [№ 6]